ネットワークにおける個人情報の保護


弁理士 河野 登夫  
  

                    「1997 インターネット 法律 及び
                     応用に関する国際検討会」にて 発表
                     1997.1.27-28
                     開催地 台北市国際会議センタ ー
                     主 催 中華民国経済部 中華 電信公司 他

1 まえがき

 1996年、日本国においてはインターネット利用者が急増した。大学等の 学術組織、企業だけではなく、行政機関もその利便性に着目して広報媒体として の利用を始めた。個人のレベルで見ると、学術組織、企業の関係者、および商業 ネット利用者のみならず、それまでPC通信の経験が無かった者、PCの購入を ためらっていた者もその魅力に惹かれてプロバイダと契約をし、あるいはPCを 購入することになった。96年の後半にはインターネットTVという、TVであ りながらWWWへのアクセスができ、簡易なE−mailもできるという商品が 市場に投入された。沿線住民へのサービスとして双方向CATVを日本で最初に 始めたある鉄道会社が、その事業の発展を図るためにインターネットのネットワ ーク・サービス・プロバイダ(以下プロバイダという)事業を開始するに当たっ て、当初の契約者を1,000名と予測した。ところが、なんと15,000名 の申し込みがあり、急遽設備容量の増加をする必要に迫られたという。つまり業 界の予測をはるかに上回る速さでインターネット人口が増加しているのである。

 インターネットの利用形態がホームページからの情報取得という、情報がほ とんど一方向に流れる形態であれば、個人情報の不適切利用の問題はほとんど生 じない。それはホームページの情報は、たとえ個人が開いているホームページで あっても本来開示を目的としているものだからである。しかしこの利用形態であ っても後述するように個人情報が盗用又は不適切な利用をされることがある。ま して文章が行き交うE−mailはその内容自体が盗用の危険に曝されており、 特にそれが経済取引に利用される場合には大きな被害の発生が懸念される。

 日本ではオフラインで個人の信用情報のデータベースが窃用された事例が知 られているが、ネット上での個人情報の盗用事例は未だ知られていない。少なく とも大きな経済的損失が表面化した事例が無いと言うことができる。しかしネッ ト上の無防備な個人情報の保護の問題は、急速なインターネット人口の増加によ り近い将来大きな社会的問題に成長していくであろうと思われる。 この問題に ついて考えるに際しては以下のような技術的、法律的背景に留意しておく必要が ある。

 ・インターネットの管理者がいないこと
 ・インターネットのボーダレス性
 ・法律の未整備
 ・通信媒体の脆弱性

 以下、インターネットに限らず、有線、無線で通信される個人情報の保護に ついての問題点を考察する。
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