ソフトウエア特許の権利侵害

特許発明の技術的範囲の解釈について

平成8年度ソフトウエア委員会


目 次
1.ソフトウエア関連発明に関する権利侵害
2.技術的範囲の解釈に関する問題
 2.1 クレームにおける文言解釈の問題
 2.2 記録媒体特許の問題点
 2.3 コンピュータの技術的性格から生じる問題

1.ソフトウエア関連発明に関する権利侵害

 平成8年度ソフトウエア委員会では、理事会からの試問を受け、ソフトウエ ア関連発明等の保護に関する調査・研究を行った。そのテーマの一つである「ソ フトウエア関連発明に関する権利侵害についての調査・研究」について、調査・ 研究の途中ではあるが、その成果の一部を報告する。
 「ソフトウエア関連発明に関する権利侵害」について検討を要する事項は多 岐にわたる。昨年度のソフトウエア委員会では、
 @ ソフトウエア関連発明についての技術的範囲の解釈にあたり何が問題と なるか
 A ソフトウエア関連発明についてどのような行為が実施行為とされるか
 B ソフトウエア関連発明の訴訟対象物の特定はどのようにするか
等に分けて、判例の調査や問題点の指摘等を行った。これら検討事項全てを1 年の任期期間中に調査・研究することは時間的に困難であるため、平成8年度ソ フトウエア委員会では、上記問題点のうち「ソフトウエア関連発明についての技 術的範囲の解釈」にテーマを絞って、引き続き調査・研究を行った。
 ソフトウエア関連発明についての技術的範囲の解釈にあたっては、判例が重 要な参考となることは当然である。しかし、前年度からの引き続き調査の結果、 現状ではソフトウエア関連発明の技術的範囲の解釈を問題にした判例は、まだわ ずかであることが判明している。よって、ソフトウエア関連発明の判例に基づい た調査・研究によって、有用な結論を導き出すのは困難な状況にある。
 また、平成9年4月に「産業上利用することができる発明の審査運用指針」 および「特定技術分野の審査運用指針 (第1章コンピュータソフトウエア関連 発明)」(以下新運用指針という)が改訂され、いわゆる記録媒体についての請 求項が認められるようになった。このような記録媒体クレームについての権利侵 害訴訟は、今後の問題であり、どのように技術的範囲の解釈がなされるのかも未 知数であるといえる。
 そこで本年度ソフトウエア委員会では、「ソフトウエア関連発明についての 技術的範囲の解釈」にあたって、ソフトウエア関連発明であるという特殊性に鑑 みた場合に何が問題となるかについて本稿担当の各委員から案を求めてその検討 を試みた。この検討結果をまとめて、ソフトウエア関連発明の問題点として問題 提起するとともに、それに対処するための実務上の注意点などにも触れたのが本 稿である。
 ここでは、技術的範囲の解釈に関する問題点を、
 @ クレーム中に用いられている文言にかかわる問題点
 A 記録媒体クレームの問題点
 B コンピュータの技術的性格から生じる問題点
の3つに分けて検討した。これら提起した問題点については、確定的な結論を 出せるようなものは少ない。したがって、あくまでも、問題点を提起することが 本稿の中心となっており、内容的に十分でない面もあるが、これらの問題提起が 実務を行う上での何らかの役に立てばと考えてここに報告する次第である。
 なお、ここでの議論は、読者がソフトウエア関連発明の旧審議基準や新運用 指針を大筋で理解しているとの前提で行っている。これらについては、ソフトウ エア委員会が既にパテント誌等に掲載した解説等を参考にしていただきたい。

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