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2026.8.3 弁理士 新井 景親
2026年6月24日、公正取引委員会、中小企業庁及び特許庁は、「知的財産権・ノウハウ・データの適切な取引のための優越的地位の濫用等に関する指針」を公表しました。近年、企業間取引において、図面、ノウハウ、製造データ等の提供を求められる場面が増加しています。取引上の優位な立場を利用した過度な要求は独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当するおそれがあるものの、要求される側としては、自衛策を講じることも重要です。今回は同指針で紹介されている代表的な問題事例と、企業が講じるべき対応策を解説します。
問題事例@ 特許出願を目的とした技術情報の取得
金属製品メーカーA社は、取引先から「自社(取引先)名義で特許出願する意図」を伏せられたまま、製造ノウハウや製造方法に関する情報の提供を求められ、本来開示する必要のない技術情報まで開示させられました。
【対応策】このような事態を防ぐには、技術情報を開示(営業活動)する前に、特許出願を済ませておくことが極めて有効なリスク対策となります。
問題事例A 見積段階での設計データの無償提供
プラスチック製品メーカーB社は、見積段階で詳細な設計データの無償提供を求められました。業界の慣行となっていたため、今後の取引への影響を懸念し、要求を拒むことができませんでした。
【対応策】見積段階であっても、設計情報を提供する前に秘密保持契約(NDA)を締結し、万が一成約に至らなかった場合でも、提供した情報の保護や返還・廃棄が担保される体制を整える必要があります。
問題事例B 製造ノウハウの開示要求
化学製品メーカーC社は、取引先から「安全確認のため」と説明を受けましたが、実際には取引先による「内製化」を目的として、化学物質の名称や配合比率などの機密性の高い製造情報の開示を求められました。
【対応策】自社の情報を「開示可能情報」と「非開示情報(秘匿情報)」に明確に分類しましょう。NDAを締結する場合であっても、中核的なノウハウ、例えば製造条件は「開示しない」という社内ルールを徹底することが重要です。
まとめ:経営資源を守るための3つのポイント
今回の指針では、知的財産権のみならず、ノウハウやデータも重要な経営資源として適切に保護すべきことが強調されています。以下の対応を日頃から実践することが重要です。
・営業活動(情報開示)の前に特許出願を完了させること
・適切なタイミング(情報の受け渡し前)にNDAを締結すること
・秘密情報を整理し、開示範囲の境界線を明確にすること
◆知的財産やノウハウの取引についてご不明な点がございましたら、お気軽に河野特許事務所までご相談ください。
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